3度のIPO経験者が語る、IPOプロジェクトチーム結成のススメ

3度のIPO経験者が語る、IPOプロジェクトチーム結成のススメ

[記事更新日]

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昨今のIPOの状況は、IT関連銘柄、特にBtoBクラウドサービス企業の高い水準での初値騰落率が依然続いており、相変わらずIT関連に対する期待感が非常に大きいことがわかります。

一部の上場企業をめぐるコンプライアンス上の問題が話題になり、上場の意義そのものが見直されている中、企業にとってIPOとは、企業価値の向上や資金調達、知名度と信頼性の向上、ストックオプションの行使による従業員等のモチベーション確保等によって、事業を一段と飛躍させる有効な手立てであることに変わりはありません。また、監査対応などで内部管理体制が充実するといったIPOプロセスを通じた副次的な効果もあり、これまでの経営体制を見直す機会を提供してくれるとも言えます。

しかしIPOを実現するには売上や利益目標の達成だけではない、上場企業として新たに発生する様々な義務に関わる大変な労力が要求されます。その中で、定期的にミーティングを開催し、準備の進捗状況、課題・問題点及びその改善状況を共有する全社横断型のプロジェクトチームを結成することで、IPO準備にかかる負担を上手く緩和するというのは今も昔も変わらないスタイルです。

なぜIPOにはプロジェクトチームが求められるのか?

IPOを目指す会社がその準備を進める際には、まずどのような体制で行うかを決定する必要があります。具体的には、上場準備プロジェクトチームを設けるのか、事務局はどうするか、上場準備室を設けて専任者を置くのか、又は兼務で行うのかを決めておくことが必要となります。比較的小規模な会社の場合には、管理部門等の責任者がIPO準備責任者となって通常の業務に加えてIPO準備をこなしていくといったケースが多く見られます。

プロジェクトチームを設けることによって、IPOまでの過程で発生する膨大な作業を迅速に処理し、現場への負担を最小限に抑えることができます。作業の具体的な中身については、IPO準備にあたって、企業は主幹事証券会社の公開引受部からの指摘事項への対応や各種資料の作成をすること、そして、その後審査部から要求されるさまざまな角度からの質問に対応しなければならないということが挙げられます。また、審査部からの質問状への回答書を作成する際には現場に詳細を都度確認をしなければならず、また、そのヒアリング対応などに費やすIPO担当者と日常業務を担当する現場社員の工数は多大なるものになります。
全社横断的にメンバーを集めたプロジェクトチームならば、各部門の代表者が審査部からの質問状に対する回答書の作成、ヒアリング対応に直接携わることで現場の負担も削減され、回答もスピーディになります。

その他にも、IPO準備責任者が集中してIPO業務を行う場合には、IPO準備に直接かかわらない部署にとっては日常業務に支障が生じず、効率的に準備を行える一方で、各部署にIPO準備の意識が薄くなってしまったり、IPOの経験、ノウハウ、達成感が全社的に共有できないというデメリットもあり、やはり全社横断的にチームを結成する方が望ましいと言えます。
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IPOで考慮すべき負担とプロジェクトチーム

その他、IPOを目指す過程で発生するコストは下記のように大別され、当該企業には大きな負荷がかかると言われています。
①株式公開準備が煩雑
②株式公開準備に関わる支出の増加
③管理コストの増加
④その他

②のように、IPO前には、主幹事証券会社に対するコンサルティングフィーや監査報酬がかかり、コストが増大します。また、IPO後も監査報酬をはじめ、証券取引所や株主名簿管理人、証券印刷会社等の上場維持コストがかかることから、コストの増大を懸念する経営者が多いことでしょう。

一方、①③といった人員の疲弊も見過ごすことはできません。①に関しては、主幹事証券会社に対し、膨大な資料の提出が要求され、管理部門だけではなく、全社各部門の業務負荷が増大します。③に関しては内部統制充実のための内部管理体制確保にコストがかかる とともにディスクローズコスト(労力)負担が増大します。IPO後は四半期開示や適時開示の人的負担が非常に大きくなります。上場準備が本格化すると、それまでの日常業務に加え、膨大な資料作成が必要となり、特に管理部門のメンバーは深夜残業や休日出勤を余儀なくされ、日に日にやつれていくといった経験をすることになります。さらに辛いことに、従業員の皆さんにとっては、いろいろな制約や内部管理体制向上のための負荷がかかりますので、特に営業部門の方々からの「そんなことやってられるか!売上を上げることの方が重要だ!」といった反発を経験することにもなります。IPOをする限りは上場企業に相応しい行動や意識の必要性を根気強く説明し、納得をしてもらうしかないのですが、社内の調整も本当に骨の折れるものです。そのため、IPO経験者の多くはもう2度とこんな苦労はしたくないと思う反面、IPOを実現した時の達成感は何事にも代えがたいものがあります。

IPOプロジェクトチームを後押しするのが経営陣の役目

①③といったものは完全になくすことはできなくとも日ごろの業務効率化への取り組みや体制づくりを通じてある程度準備を進めることで上場準備が本格化した際に負担を軽減することができます。

既述のとおり、上場準備が本格化したからといって、それまでの日常業務が無くなるわけではなく、日々、深夜まで残業し、場合によっては休日出勤もしなければならず、若干名の増員で何とかしのぐといったケースもあります。上場後は業績が伸び、企業規模が拡大したこともあり、管理部門も大幅に増員をし平常の勤務状況となりましたが、後々になって、日常業務の効率化・軽減化することにより、増員をすることもなく乗り切れたのではないかと思うこともあります。しかし、こうした意思決定は管理部門の一担当レベルに判断を任せられることではなく、会社としてIT化投資などを通じた後押しが不可欠です。

これまでは、日常業務を軽減する術がなかなかない状態であったことや、生産性向上に対する意識が希薄であったことから、労働時間の延長を積み重ねることで乗り切るという形が一般的でした。しかし、フリーランスから中堅、大手企業まで、企業レンジや企業形態に対応した安価なクラウド型システムが多数登場し、将来のIPOやその後の展開を見越して早期に業務体制の構築に取り組む企業がここ2~3年で急速に増加傾向にあります。業務の効率化に留まらず、業務の属人化を解消し内部統制や情報の保持の観点からも、昨今では監査法人からクラウドサービスの導入を勧められるといったケースもあるそうです。

また、無駄な増員はしない方が望ましいと記述しましたが、大抵は上場準備が本格化し、上場後のタイムリーディスクロージャーが必要となるような状態にあってなお経理1名体制というのはかなりリスキーなものがあります。人間である以上、ミスは避けられないものであり、上場後の開示書類等に不備が発生し、訂正有価証券報告書等の提出を防ぐためにも、少なくとも経理は2名以上の体制で、相互にチェックをする体制の構築が必要であり、人員計画の早期構築も避けることはできません。

繰り返しになりますが、上場準備とIPO後のディスクロージャーやIRをはじめ、管理部門の負荷は膨大なものになります。それに対し、出来るだけ専念できる体制を構築するには、如何に日常業務を効率化し、負荷を軽減するかが鍵となります。そのためには経営陣による、IPOチーム、そして管理部への理解と後押しが欠かせないものとなり、IPOとその後企業活動の成否を分けるものとなるでしょう。

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著者プロフィール
丸田剛
1988年コンビ株式会社入社、初めてIPOを経験。1992年よりツインバード工業株式会社にて経理部長、株式公開準備室長、情報システム部長を経験。他部門の協力を得ながらも、アシスタント1名との実質2名体制でIPOを実現。1997年より株式会社サンライズテクノロジーにて取締役管理本部長兼株式公開準備室長、IPO後は取締役常務執行役員経理財務本部長兼総務本部長を歴任。各社にて3回のIPOを実現。

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